★☆★☆ボストンかわら版インタビュー★☆★☆
Keep Going
キルトの夢・１８時間の空路に乗せて
今日は有名なキルト作家の長野富江さんがたまたまボストンに滞在されているというのでお忙しい日程のところを時間をさいて頂きました。彼女のまわりには、彼女のキルトが豪奢にかけられていました。キルトが椅子に座っていると言った方がいいかもしれません。
わ〜すっごく素敵なキルトですね。全部日本でつくられたものですか？
はい、そうです。「素敵なキルト！」と言って頂けるととても嬉しいです。「見た目」で感動して頂けるだけで私は９０パーセント満足します。後の１０パーセントはキルトに込める私の思い入れがあります。
だいたいひとつつくるのにどれくらい期間がかかりますか？
多くの芸術的作業と同じように実質時間と必要時間がありますが、たとえば最も小さなピース（一枚が１インチ）で２メートル４０センチのべットカバーを作りますと、五、六カ月かかります。一日１５時間縫ってです！私は全ての工程を手縫いだけでやっています。
すごい作業ですね。それにしてもこれは随分小さいサイズですね。これを何個ぐらい集めてあのような大きなサイズになりますか？
九千七百枚！ 私は今までべットカバーサイズだけを作り続けて来ました。
この色はなんて素敵な色でしょう。ちょっと言葉ではいいあらわせない濃いブルーですね。
ジャパン、ブルー・・・日本の藍いろ独特のものですよね。かつて「世界でも類を見ない」と絶賛されたものです。藍色が枯れてなを美しいことに私は自分の年齢を重ねて考える事があります。
「枯れてなを美しい」というのは良い言葉ですね。富江さんは長年古布を集められたという話を聞きましたが。
最初、私が始めたころはまだ古布だけでと言う方はとても珍しがられましたし布も沢山集められました。今でも私のようなスタイルのキルト作家は他にいないのではと自負しています。
キルトの歴史といいますとイギリスからニューイングランドに上陸した最初の植民者たちかと思いますが、日本ではいかがですか？
日本では古くから「つぎ寄せ」と呼ばれる文化があります。このつぎ寄せは「百徳着物」と呼ばれ、最も古くは天保１０年に残されたものがあります。安土、桃山時代の頃の僧侶の身につける袈裟（けさ）も余り布で作られた「パッチワーク」でした！
ところで執筆もなさると聞きましたが。
教育書で「ライフスキル」として「キルトで創るライフスキル」という本を２冊（著書）執筆しました。レクチャーやプレゼンテーションもしますが。
去年アメリカで展覧会をされたそうですが。
昨年、ローウェルにある「ニューイングランド・キルトミュージアム」で３月から８月まで「モード・インディゴ」という展示の中のスペシャル展示ということで展示していただきました。素晴らしい評価を頂いて光栄でした。
日本のお宅は北海道と伺いましたが、どういう風に暮らしてキルトをつくっていらっしゃいますか？
私の工房は斜里町と言う小さな町にあります。夫は車で１時間３０分位離れた北見市の自宅にいます。私は結婚していますがずっとセパレーツの暮らしをしています。週末は夫と一緒に過ごしますがあとは工房で一日１５時間キルトに関わる仕事をしています。
私たちはお互いの仕事を理解し高めていく事について最大の理解者である事に満足しています。
キルトそのものは使用に耐えるという意味では工芸ですが、装飾としては芸術の分野ですね。
たぶん陶芸、絵、多くのものがそうだと思うのですが後世に残したいという思い入れの強いものと、暮らしの中で彩りを添えたいとか豊かな心を育みたいと思うものがありますよね。私も自分や家族、友達にガンガン使ってもらいたいものと、これは「私の作品」と呼べるものとがあります。現在５年連作で作っているキルトは何かの形で後世に残したいと考えて作り続けているものです。とても美しい日本の古布を二千種類以上使っています。
今後、どういう風に発展させて行きたいとご希望ですか？
現在までに６５枚のキルトを作りました。今は自分のキルト作りの集大成の作品集を出版することと、最も大きな私の夢は「アメリカ５１州でエキシビジョンツアー」をやる事です！
キルトの世の中への貢献度についてお聞かせ下さい。ちょっと質問が広すぎますでしょうか？
すごく嬉しい質問です。「衣、食、住」の「衣の文化」としてキルトで伝えられる事を可能な限り役立たせたいと願っています。草の根的な活動もあります。アメリカ社会の中で私が出来る事を考えています、多くの人の目を楽しませ文化の交流につながる事がありましたらぜひ紹介してください。
最後に、ご自分の今までの人生で一番ラッキーだと思われる事って何でしょうか？
出会い、出来事、仕事、今までの人生の全てがラッキーだと思います。良い事も悪い事も、辛い出来事も悲しみも、、、全てが今の私を作っているからそう思います。
